研究概要 |
多包条虫の代替終宿主モデルではモデル動物への副腎皮質ホルモン投与が虫体の成熟に必須であることが示されている。そこで,代替終宿主モデルの改善を目的として,モデル動物(スナネズミ)に投与する副腎皮質ホルモン製剤の種類(純末プレドニゾロン,ブチル酢酸プレドニゾロン(PTBA),リンデロン),投与量(0.5〜10mg),投与経路(皮下,腹腔,経口),投与期間(感染前1週間と感染後1,2,3週目まで)及び投与頻度(1,2,3日毎)の感染寄生虫体数への影響について検討した。動物への副作用が少なく,かつ虫体回収率が最も高かったのは,PTBA5mgを2日おきに感染1週間前から剖検時まで皮下投与した群であった。また,近交系スナネズミ2系統(MON/Jms/Gbs SlcおよびMGS/Sea)および当教室の繁殖スナネズミの代替終宿主としての感受性を比較したが,当教室繁殖スナネズミからの虫体回収率が一番高かった。また,ハムスターではACN系とCN系の比較を行ったが,CN系の感受性が高いことが示された。 虫体排除に係わる機能免疫系を解析するために,副腎皮質ホルモン製剤の代わりに作用範囲の限定された非ステロイド製剤(シクロスポリンAおよび各種アラキドン酸代謝経路遮断剤)の影響を調べた。しかしながら,シクロスポリンAおよびアラキドン酸代謝経路遮断剤を投与した群では虫休回収率は悪かった。また,肥満細胞の欠損したW/W^VマウスおよびT&B cell機能不全のrag^<2->マウスでも虫体回収率は悪く,虫体の定着に及ぼす機能免疫系を特定することはできなかった。 また,上記モデルを中南米に分布するフォーゲル包条虫に適用したところ,感染後35日目に虫卵の排泄が認められ,50日目には成熟虫体が回収されて,本モデルがフォーゲル包条虫に対しても有効であることが示された。
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