研究概要 |
多包条虫の代替終宿主モデルの改善を目的として,モデル動物(スナネズミ)に投与する副腎皮質ホルモン製剤の種類,投与量,投与経路,投与期間及び投与頻度を検討したところ、PTBA5mgを2日おきに感染1週間前から剖検時まで皮下投与することにより、動物への副作用が少なく,かつ虫体回収率が最も高くなった。また,当教室の繁殖スナネズミは近交系スナネズミよりも虫体回収率が高かった。また,ハムスターではACN系よりもCN系の感受性が高いことが示された。 PTBAの代用として用いたシクロスポリンAおよび各種アラキドン酸代謝経路遮断剤を投与した群では虫体回収率は悪かった。また,肥満細胞の欠損したW/W^Vマウスでも虫体回収率は悪く,虫体の定着に及ぼす機能免疫系を特定することはできなかった。 また,上記モデルを中南米に分布するフォーゲル包条虫に適用したところ,感染後35日目に虫卵の排泄が認められ,50日目には成熟虫体が回収された。 代替終宿主ゴールデンハムスターにおける防御免疫応答を観察するため、再感染実験および経口免疫実験を行った。初感染群に対する各群のチャレンジ感染後の回収虫体数は、再感染群で顕著に少なかったが、経口免疫群に差は認められなかった。再感染群においては、各種抗原に対する血清IgG、IgAおよび腸管内洗浄液中のIgA抗体価の上昇が認められた。一方、経口免疫群においては、どの抗原で免役した群も、成虫ES抗原に対する血清IgG抗体価の上昇のみが観察され、腸管内洗浄液中のIgA抗体価の上昇はみられなかった。 以上、代替終宿主における再感染防御と多包条虫虫体抗原に対する全身の血清IgGおよびIgA応答ならびに局所における腸管内IgA応答との関連が示唆された。
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