我々はシマリスの血清HDL値が著しく高値であることを見出しその成因について検討している。これまでの成績から、シマリスにおける血清中の高HDL値は種特異的である。HDLに関与する因子にはアポA1、LCAT、LPL、アポC2、CETP、HTGL等があり、CETPとHTGLの欠損はHDLを上昇させる。この内、LCATについては高値であることを既に報告した。今年度は、脂質代謝に関与する各種パラメーターのうち、アポC2(<0.5mg/dl)、アポC3(0.36±0.24mg/dl)、アポE(1.78±0.56mg/dl)、LPL(1170±99.83〜2000<ng/ml)、HTGL活性(0.1392±0.056μm/ml/min)、CETP活性(2.149±1.115nm/ml/min)、CETP蛋白量(<0.4μg/ml)の測定を行った。(括弧内は測定値)。 以上の結果から、CETP蛋白量は測定限界値以下であり、CETP活性及びHTGL活性とも低活性であることが明らかになった。このことはシマリス血清中の高HDL値がCETPの低活性によるものであることを強く示唆するものと考えられた。 一方、ヒトCETP欠損症ではCETP遺伝子のイントロン14とエクソン15のポイントミューテーションが知られている。今回、我々はSakai等の方法によりシマリスのエクソン15について変異の有無を検討したところ、28bp付近のバンドを欠く特異なパターンを見出した。現在この点の詳細な検討を継続中である。 今後、CETPを腑活することが知られている降脂質剤(プロブコール)の投与、ならびに高脂食負荷による血清脂質成分の挙動を追跡することにより、高HDLの成因、特にCETPとの関連を明らかにしていく予定である。
|