研究概要 |
1、 H.pylori標準株、臨床分離株、遺伝子変異株を用いた持続感染モデルの検討 H.pylori標準株であるATCC43504株、臨床分離株であるCPY2052,CPY3401,HPK127株を、C57BL/6マウス、BALB/cマウスに胃ゾンデを用いて胃内投与し、H.pyloriの持続感染率をPCR法および培養法で経時的に検討するとともに胃炎および胃癌発症の程度を病理組織学的に検討した結果、CPY2052株のみが感染4週後より胃炎を惹起することが明らかとなった。しかし、H.pylori単独感染では胃癌の発生は認められなかった。 2、 発癌剤+H.pylori持続感染によるマウス胃癌発症モデルの確立 H.pylori CPY2052株持続感染マウスに発癌剤N-ethyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine(ENNG)を投与することにより、発癌率に及ぼすH.pylori感染の影響を検討した。実験群として(1)対照、(2)発癌剤のみ(ENNG 100mg/l.)、(3)H.pylori感染のみ、(4)H.pylori感染+発癌剤の4群を作製し、発癌剤およびH.pylori投与20週後、40週後に胃および十二指腸を採取し病理組織学的に検討した結果、H.pylori感染単独群ではhyperplasiaあるいはdysplastic hyperplasiaは認められなかったのに対し、発癌剤との併用により、hyperplasiaおよびdysplastic hyperplasiaの頻度は有意に増加した。しかし、明らかな胃癌の発生は認められなかったため、現在、H.pylori感染とMNU投与群での検討、H.pylori感染と発癌剤投与の時期的検討、および病原性の異なる臨床分離株の樹立を行っている。
|