実験動物の心・血管系に及ぼす環境温度の影響を明らかにすることを目的とし、本年度(平成11年度)は以下の研究を実施した。【材料及び方法】生後3ヵ月齢のゴールデンハムスター、ハートレイ系モルモット及びニュージーランドホワイト種ウサギの各々20例を用い、高温(33℃)及び低温(15℃)飼育群として各々暴露24時間後に血漿・心臓を採取した。なお対照群として22℃飼育群を用い、各群の血漿心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)濃度をラジオイムノアッセイにて測定し、心房筋細胞内のANP分泌顆粒を免疫組織化学的並びに電子顕微鏡学的に検索した。【結果及び考察】高温暴露後のモルモットの血漿ANP濃度は対照群に比べ有意に低値であった。また、免疫組織化学的に高温暴露後のモルモットの心房筋細胞は、対照群に比べANP抗体に弱く反応し、電顕的にもANP顆粒数は対照群に比べ減少していた。高温暴露後のハムスター及びウサギの血漿ANP濃度は対照群と差はなく、免疫組織化学的並びに電顕的にもANP顆粒に変化は認められなかった。低温暴露群においては何れの動物種共に、血漿ANP濃度及び心房筋細胞内のANP顆粒は対照群と差はなかった。以上の結果より、高温環境が心房筋細胞内のANP合成・分泌機序に与える影響には動物種差が存在し、モルモットでは高温暴露により血圧が低下するためANP合成・分泌が抑制されることが示唆され、何れの動物種共、低温暴露によりANP合成・分泌機序は変化しないことが明らかとなった。
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