コンディショナル・Tsc2ノックアウトマウス作製のため、まず通常のジーンターゲッティング法により、同方向の一対のloxP配列をエクソン3と4を挟みこむ形でイントロンに挿入した潜在型変異Tsc2アレル(Tsc2-floxPアレル)を持つマウスES細胞株を樹立した。このTsc2-floxPアレルを持つマウスの系統を樹立し、F1ヘテロ接合体同志の交配を行ったところ、tsc2-floxPアレルのホモ接合体マウスを得ることができた。またすでに機能的に不活化されていることが明らかとなっている欠失変異Tsc2アレル(Tsc2-44アレル)とTsc2-floxPアレルとのヘテロ接合体マウスも得ることができた。Tsc2-44アレルのホモ接合体は胎生期に死亡するが、上記のヘテロ接合体が得られたことにより、Tsc2-floxPアレルは機能を保持していることが明らかとなった。またCAGプロモーターにより部位特異的Cre組換え酵素を発現するトランスジェニックマウスとの交配を行い、loxP間での組換えによりTsc2-floxPアレルのエクソン3、4を欠失させた変異アレル(Tsc2-dex3/4アレル)を持つマウスの系統を樹立したところ、そのヘテロ接合体ではTsc2-44アレルを持つマウスの場合と同様に腎発癌が観察された。またTsc2-dex3/4アレルのホモ接合体は得られず、胎生致死となっていると考えられた。これらの結果によりTsc2-dex3/4アレルは不活化されていることが明らかとなった。以上の結果をふまえ、生後1週のTsc2-floxPアレルホモ接合体マウスの脳にCreを発現する改変アデノウィルスを注入し、脳内でTsc2の不活化を試みること、および心筋特異的ミオシン軽鎖遺伝子プロモーターによりCreを発現するトランスジェニックマウスとの交配による、心筋特異的なコンディショナル・Tsc2ノックアウトマウスの作製を行った。現在それらのマウスの表現型の解析と共に、Tsc2-floxPアレルホモ接合体マウス由来の培養細胞を用いたin vitroでのTsc2不活化の実験系の樹立を進めている。
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