研究概要 |
1 センダイウイルスのマウス肺病原性を支配する遺伝子の同定 強毒野生株(M1)と弱毒変異株(MVC11)との比較から、C蛋白の170番目のPheからSerへの変異により、ウイルスの毒性が消失することを明らかにした。さらに4種類のC蛋白(C′,C,Y1,Y2)の変異ウイルスをリバースジェネティクス法で作製して、Cの欠損株ならびにCの10-15番目のアミノ酸を欠失した変異株でマウス病原性が減弱することを示し、C蛋白の病原性への関わりを明確にした。一方、MVC11にはL蛋白の2050番目にGluからAlaの変異があり、ウイルスの毒力への関与について解析を進めている。 2 C蛋白変異ウイルスの弱毒化機構 (1)インターフェロン感受性:C蛋白は細胞のインターフェロン感受性を低下させるとされているが、MVC11はインターフェロンレセプター(IFNR)のノックアウトマウスに対しても、IFNRを持つ通常のマウスと同程度に弱毒化されており、インターフェロンの関与はないという結果を得た。 (2)細胞死の影響:C蛋白変異弱毒化ウイルスは、アポトーシスおよびネクローシスを引き起こし、感染細胞を死滅させた。その結果ウイルスの増殖は中断され、このことが病原性の低下をもたらすものと推察された。一方、強毒株によるアポトーシスおよびネクローシスの誘導は軽微で、長期間にわたりウイルスを産生し続けた。カスパーゼ阻害剤存在下でも、弱毒株感染細胞は速やかに死滅した。この条件では、アポトーシスの誘導は抑制されていたがネクローシスは抑制されておらず、弱毒株による細胞死にはネクローシスの役割が大きいと考えられた。 3 組み換えキメラウイルスの増殖能の検討 Z株と新鮮分離株のP遺伝子のキメラウイルスは増殖能が低下する傾向が認められ、今後詳細に検討する必要があると考えられた。
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