研究概要 |
ハイドロキシアパタイト(以下HA)は骨との親和性が極めて高いことからHAを用いた人工歯根(以下implant)の商品開発が行われている。その用い方には現在二つの方法が具体化されており、-つはdense HAを用いたimplantで他の一つはチタンにHA顆粒をプラズマスプレーしたHA-coated implantである。後者のimplantは80年代後半から90年代半ばにかけ世界中で一斉を風靡したが、90年代半ば以降様々な問題点が指摘され始めた。最近、HA coating層を高度に結晶化させればそれらの問題点は無くなるとの根拠のもと、high crysatalline HA-coated implantが一部のメーカーにより新たに商品化された。 今回の研究目的はdense HA implantを比較対象として,従来のHA-coated implantの欠点の原因を明らかにするとともに、新たに商品化されたhigh crysatalline HA-coated implant の生体内での安定性を検討することにある。 その結果、従来のHA-coated implantの問題点はHA coating層内に多く含まれているアモルファス相が科学的安定性に乏しいのみならず、アモルファス相が生体内においてOH^-を取り込むことで結晶化しその結晶化が科学的安定性を高めることにはつながらずむしろ体積変化に伴う歪を生じさせ、その歪がHA coating層の機械的性質を低下させるとともにHA coating層とメタル基盤の結合強度を低下させることが明らかとなった。 新たに商品化されたhigh crysatalline HA-coated implantはHA顆粒をプラズマスプレーした後に何らかの方法でOH^-を取り込ませ、HA coating層を高度に結晶化させたものと考えられる。再結晶化した結晶は従来のHA-coated implantが生体内で結晶化した結晶に比べ大きい。しかし、それらは一度アモルファス状態になったものを再結晶化させたもので、HA coating層の結晶性はdense HAに比べ未だかなり低い。また再結晶化させる過程でHA coating層内の全体にクラックやボイドの空隙が生じており、それらの空隙はHA coating層を脆いものにしている。このようなhigh crysatalline HA-coated implantを犬の骨内に1ヶ月〜15ヶ月間埋入しその植立強度をpush-out試験で評価した結果、HA coating層の劣化に伴う植立強度の低下傾向が明らかとなった。
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