研究概要 |
本年度は実験装置を改良し,コンピュータ制御により荷重の制御が任意に可能なようにした.まず圧縮負荷と除荷の波形を非対称に設定して,ラットを利用した動物実験を行った結果,これまでの動物実験の問題点は荷重波形の設定にあることが明らかとなった.従来の研究では,荷重として一定圧縮荷重と零荷重の間で正弦波状に振動する圧縮荷重波形を採用しているが,この波形において生体組織が認識不可能であると考えられる直流成分を除き交流成分のみについて注目すると,圧縮の刺激と引張の刺激が打消し合う波形となってしまい,このために骨の形成が応力に非依存的になるようである.実際に本実験系においても正弦波的な荷重波形のもとでは,骨は主に中立軸付近に形成され,骨形成は応力に非依存的であった.これに対して,一定圧縮荷重を短時間保持し零荷重の時間を比較的長時間保持する矩形波形を採用し,交流的に圧縮荷重負荷である荷重波形を設定して実験を行うと,骨は圧縮応力側において特異的に形成され,骨形成に明らかな応力依存性が生じた.さらに相補的な波形として,一定圧縮荷重を比較的長時間保持し無荷重の時間を短時間保持する矩形波形を設定すると,骨の形成される部位が骨の断面内で逆転した.この波形は交流的に引張荷重負荷波形になることから,部位の逆転は先の実験結果と整合的である.したがって力学的刺激による骨形成は応力依存的であることが明らかとなった.
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