研究概要 |
本年度はまず最初に,改良されたラット用実験装置を利用して種々の荷重条件に対する骨形成状況を調べた.昨年度には骨の応答には荷重波形が大きく影響することが明らかになったことから,さらに波形を構成するパラメータのうち,パルスの間の無荷重時間,およびパルスの繰り返し数に注目して,どちらが効くかを追求した.荷重パルス間の無荷重時間の影響を調べるために,最短0.5秒から2000秒まで実験条件を変化させたが,その結果,無荷重時間が長いほど骨形成が顕著になることが分かった.一方,繰り返し数については,1,4,36回に変化させて実験をしたが,この場合も回数が多いほど骨形成が上昇した.回数が多いほど影響が大きいことは知られており,本研究の結果はそれと整合的であるが,パルス間の間隔が影響することはこれまで報告されておらず新しい知見であるので,現在さらに実験条件を変化させて,詳細な検討を加えている。 また,細胞機能に影響を及ぼす種々の薬剤を利用して,力学刺激による骨形成への影響を調べた.その結果,インドメタシンは骨形成を阻害する傾向をもつが,それほど顕著な効果はなかった.これに対して,COX2を特異的に阻害する薬剤を投与した場合には,顕著な骨形成の抑制が観察された.このことから,力学刺激による骨形成にはCOX2が関与していることが推定された. さらに骨形成時におけるMMPの関与を調べるために,in situ zymographyによる活性化MMPの局在を調べた.力学刺激による骨形成部位の近傍において酵素活性の上昇が観察されるとともに,免疫染色でも陽性の所見が得られた.力学刺激時のMMPの発現も新しい知見なので,来年度は実験数を増やしてより詳細に調べていく予定である.
|