研究概要 |
本年度は改良された実験装置を利用して,コンピュータ制御に発生させる任意波形のもとでのラット脛骨における骨形成について研究した.前年度までの研究により,骨は動的刺激のみを認識していることが明らかになった.動的応力状態と静的応力状態の差異は,応力の作用しない時間が長いか短かいかだけである.したがって,骨が動的応力状態のみを認識するということは,骨組織は応力が作用しない状態を認識していることを意味する.そこで,荷重作用時間を0.5秒一定とし,荷重の作用しない休み時間を0.5秒から数十秒まで順次増大させていったところ,休み時間の増大とともに骨形成量が増大していく現象を見出した.このような現象は全く知られていなかったが,今まで報告されている骨組織の力学応答の資料と整合的である.組織が動的刺激にのみ応答を示すことは,静的状態において組織内の内部状態に変化が生じていることを意味する.また,さらに刺激の繰り返し数を変化させて実験を行ったところ,刺激が有効であるためには,繰り返し数が20回程度以上必要なことも分かった.このように,有効な刺激には,無刺激状態の存在と刺激の繰返しの両者が必要であるという,骨の適応的リモデリングに関するきわめて特異的な特徴が明らかとなった.またイヌ尺骨骨切術を利用した生理的負荷状況における骨リデモリングについても実験を重ね,骨は動的圧縮応力が作用する部位でのみ適応的形成を生じることが分かった.この結果はラットの非生理的負荷状況における結果と一致しており,骨の応答が種によらず力学的状況で支配されることが明らかになった.
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