痛みやルーズニングにより摘出されたCo-Cr-Mo合金製とTi-Al-V合金製人工膝関節の周囲組織中の合金微粒子及び金属イオンの局在を走査電子顕微鏡(SEM)と透過電子顕微鏡(TEM)を用いて調べる実験を行った。その結果を以下に示す。 いずれの合金においても合金微粒子は滑膜の広範囲にわたり分布していた。そのほとんどが細胞に取り込まれていた。細胞をSEMで観察すると細胞内に塊状または棒状の合金微粒子が確認された。細胞をTEMで観察すると細胞のライソゾーム内に合金微粒子が取り込まれ変性しているのが観察された。細胞をEDSで分析するとCo-Cr-Mo合金ではCo-Cr-Mo合金系の合金塊とCr粒子の2種、Ti-Al-V 合金ではTi-Al-V 合金の摩耗片が含まれていた。SEMおよびTEMでCo-Cr-Mo合金とTi-Al-V 合金の生体内での挙動の違いを調べた結果Co-Cr-Mo合金では毒性の高いCoが溶出し、それによる為害性を生体に与える可能性が示唆された。 続いて免疫電顕法を実施して、金属微粒子と結びつく蛋白質の局在を調べる実験を行う予定であったが、人工関節を装着する以前の関節腔内に存在する蛋白質の局在を調べる必要があり変形性関節症(OA)および慢性関節リウマチ(RA)の患者についてプロテオグリカンの成分であるコンドロイチン硫酸を認識する抗体(CS56)を用いて免疫電顕法を実施した。その結果イムノゴールド法における金粒子数の多少により軟骨基質蛋白異常が調べられる可能性が示唆された。
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