研究概要 |
磁性流体アクチュエータ駆動人工心臓の可能性について明らかにした.磁性流体及び鉄心に磁界を加え,磁性体が発生する圧力及び流量を測定した.アクリル管(外経:10mm,内径:7.4mm)の両端に小さなゴム袋(約1.2mL)を付け,ゴム袋を円筒形のケース(30mmD X 67mmL)の中に入れた.ケースの他端にチューブを取り付け,U字管とした.U字管の途中に,圧センサ,クランプ,電磁流量計プローブを挿入した.U字管およびケース内(ゴム袋の外側)は,生理的食塩水で満たした.アクリル管およびゴム袋内は水で満たし,管の中央に磁性流体及び鉄心を挿入した.アクリル管部を環状ソレノイドのギャップ(10mm)中に固定した.2つのソレノイドは15mmはなした.ソレノイドはコンピュータ(NEC,PC-9801)からの信号により交互に励磁した. 電流4Aにおける一回拍出量は,磁性流体のみで0.19mL,鉄心のみで0.77mL,鉄心と磁性流体で0.87mLであった.最大流量は,磁性流体のみで30mL/min,鉄心のみで240mL/min,鉄心と磁性流体で307mL/minであった.後負荷の増加と共に流量は減少した.磁性流体のみでは,13mmHg,鉄心を使用したものでは270mmHg,鉄心と磁性流体では310mmHgの負荷に対して流量が0になった. 磁性流体が発生する圧力を計算した.磁界の強さを実験で使用した0.236Tとし,圧力100mmHgが得られる磁化の強さを求めるとM=113kA/mとなる.これは現在の磁性流体の2倍の磁化の強さである.次に流量について検討した.鉄心と磁性流体を併用することにより,有効駆出率は81%になった.従って磁化特性の大きい磁性流体の開発や高磁界印加により,磁性流体のみで負荷圧に対して確実に移動するようになれば,管径を大きくする,ソレノイドを多段にしてストロークを大きくすることにより,磁性流体駆動人工心臓は可能性である.
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