関節の循環メカニズムの解明には、その摩擦測定が有力な手段となる。そこで、垂直多関節ロボットアーム(既設)を主要な装置として、動物関節の摩擦測定システムを構築し、関節の病態や力学条件の変動の影響を検討した。平成10年度には、ウサギ5膝関節を対象とした実験を行い、(1)無侵襲(正常に近い状態)、(2)表面を洗浄(関節液の正常変化)、(3)ヒアルロン酸(HA)投与(関節液の回復モデル)の三つの条件について、10Nの荷重直後と静止荷重300s後の起動摩擦係数を測定した。その結果、静止荷重0sにおける無侵襲の摩擦係数(平均値±標準偏差)は0.015±0.002であった。洗浄後は0.023±0.010と有意に上昇した。(P<0.05)。さらにHAを塗布することで、0.019±0.010と減少した。静止荷重300sにおける無侵襲の摩擦係数は0.25±0.10であり、洗浄後は、0.31±0.13と有意に上昇した。(P<0.05)。さらにHAを塗布することで0.22±0.10と有意に減少した(P<0.05)。平成11年度においては、正常関節以外にに関節液が変性したモデルとして、パパインをin vivoで定期的に投与した変性関節モデルについて起動摩擦を測定した。実験に日本白色ウサギ5羽6膝関節を用い、10Nの静止荷重直後、一定時間荷重の条件で、起動摩擦係数を測定した。その結果、静止加重0sにおける無侵襲の摩擦係数はいずれの条件においても0.020となり、有意差はなかった。静止荷重150s後においては、正常関節において平均0.09であったのに対し、変性関節モデルにおいてその3倍程度の0.28と有意に上昇した(P<0.05)。さらに荷重時間を増して両者が増大しても、その比率は、約3倍を維持した。また、ヒアルロン酸投与によっても、変性関節モデルの摩擦係数は低減しなかった。
|