今年度は白金電極を用いた測定セルを制作し、既存の高精度LCRメータHP4285Aを用いて75KHzから30MHzまでの血液サンプルの測定を行った。サンプルとして低張(54%、72%NaCl水溶液)、等張(0.9%NaCl水溶液)および高張の浸透圧(1.08%、1.26%の食塩水に赤血球を懸濁したもの、未処理の血液などを使用した。 その結果、低張のサンプルでは構造分散周波数が低くなり、分散周波数に対応する時定数の分布の広がりが小さくなることが分かった。低張の血液では赤血球が球形に近付き等価的な時定数の分布が一様になるためと考えられる。一方高張の血液では構造分散の時定数の分布が拡がり、従来より電気インピーダンス計測で用いられてきた3要素モデル(細胞外液抵抗を示すRe、細胞内液抵抗を表すRi、細胞膜容量を表すCmとで構成されるモデル)では表現しきれない結果となった。 また、赤血球は流れると配向するばかりでなく変形もすることが従来から続けていた低周波の電気特性の測定により分かってきた。このことから血液のインピーダンスを30MHzまで流動状態と静止状態とで計測し、比較したところ流動状態では構造分散の時定数が低くなり分布の広がりが小さくなった。これは赤血球の一様な配向に対応した結果である。 本研究の成果の一部を第3回世界バイオメカニクス世界会議(平成10年8月2日〜8月8日、札幌)、第20回IEEE in M.B.S国際会議(平成10年10月29日〜11月1日、香港)、およびサテライトシンポジウム大会(平成10年11月2日〜4日、北京)にて発表した。
|