本研究の主要目的である、生体組織の電気特性の解析および細胞内外水分の電気的計測について、理論解析が比較的容易な血液を用いて実験および理論解析を行い、無侵襲的に細胞内外水分分布が推定できることを確認した。血液の電気特性は医用生体工学において極めて重要であるばかりでなく、理論的な解析が容易なので、筋肉等他の組織の電気特性の推定にも利用できる。電気的特性から、組織の構造も推定できることを確かめた。 昨年度は主に実験を行い、これまで測定が困難であった血液の電気特性を正確に測定できるようにした。この結果、正常血液、高Naおよび 低Na食塩水に懸濁した血液、流れている血液について信頼できる電気特性データが得られた。 本年度は主に理論解析法の検討を行い、測定電気特性と細胞の特性との関係を理論的に解析した。この結果、生体の電気特性を測定することによって、細胞の体積分率、細胞の形状、細胞内外水分量、細胞膜の特性などが推定できることが分かった。この解析法を利用して昨年度の血液についての測定結果を解析するとともに、筋肉など他の組織への応用についても検討した。 生体の電気特性を平行等価電気回路で近似すると、細胞体積分率が大きく測定され、細胞外水分は少なく測定される。また、β分散周波数の測定から求めた等価的細胞膜電気容量も実際の膜容量とは異なり、補正が必要である。細胞内外水分量および細胞膜容量の補正についても理論的に検討した。 研究の成果の一部は平成10年度に三つの国際会議で報告したほか、平成11年度においても二つの国際会議で報告した。
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