親水性ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)と疎水性ポリスチレン(PSt)が16nmのオーダーで交互に規則的に並ぶラメラ状のミクロ相分離構造を有するPHEMA-PSt-PHEMAABA型ブロック共重合体(HSB)表面での免疫細胞、特にリンパ球の壊死(ネクローシス)阻止機構の解明を目的とした。対照群として、疎水性の均一表面のPSt、親水性PHEMAと疎水性PStとが均一に分散しているPHEMAーPStランダム重合体(HSR)表面を用いた。平成11年度はHSBの親水性/疎水型のミクロ相分離構造表面に対する形質膜貫通性のSurface Immunoglobulin(SIg)のCapping形成を阻害及び非阻害した場合の粘着リンパ球を走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて比較解析した。さらに、粘着リンパ球全体及びそのミトコンドリアのTEM像を画像処理解析装置(IA)を用いて定量的に比較解析した。リンパ球形質膜のSIgをCapping形成阻害Dimethyl sulfoxide(DMSO)を用いた。材料表面とリンパ球との相互作用はマイクロスフィアカラム法を用いて行った。PSt及びHSR表面に対する非阻害粘着リンパ球は激しいネクローシスを生じていたが、HSB表面に対する非阻害粘着リンパ球は球状形で、細胞質は良好に保持されておりネクローシスは抑制されていた。また、HSB表面に粘着した非阻害リンパ球とコントロールの非阻害リンパ球の全体及びそのミトコンドリアの画像処理解析において、2群間に有意差はなかった。阻害した場合の粘着リンパ球は全ての材料表面において球状形で、細胞質も良好に保持されておりネクローシスは抑制されていた。全ての材料表面に粘着した阻害リンパ球及びコントロールの阻害リンパ球の全体及びそのミトコンドリアの画像処理解析において、4群間に有意差はなかった。リンパ球形質膜のSIgは細胞骨格と密接に関連していることから、HSBのラメラ状のミクロ相分離構造表面はリンパ球形質膜から細胞骨格へのシグナル伝達を抑制することによりネクローシスを抑制することが示された。
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