ゲルの膜を持つマイクロカプセルは外部刺激に応答して膜が変形するために、pHや温度に応答して薬物を放出するデバイスと成りうる。しかし、この膜の変形能は同時に膜の機械的強度が弱いという欠点でもある。今年度は、poly(DMAAm-co-DMAPAA-co-AmSt)およびpoly(DMAAm-co-METAC-co-AmSt)とテレフタル酸ジクロリド(TPC)の共重合によりゲルマイクロカプセルを調製し、表面の性質と膜の構造を電気泳動移動度から検討した。更に、これらの表面をポリエチレングリコール(PEG)で修飾したマイクロカプセルを調製した。また、赤血球との相互作用を検討した。poly(DMAAm-co-DMAPAA-co-AmSt-alt-terephthalic acid)マイクロカプセルの膜は内部が正に帯電し、外部が負に帯電した2層構造を持つ事が示された。TPCはカルボン酸を持ち、マイクロカプセルをW/Oエマルションから界面重合法で調製する際に外部からTPCを加えるので、膜の外層に負電荷が多く、内層に正電荷が偏ったものと考えられる。一方、poly(DMAAm-co-METAC-co-AmSt-alt-terephthalic acid)マイクロカプセルの膜は一層の正に帯電した膜を持っていた。これは、膜を形成する高分子が4級アンモニウムを持っているためである。このマイクロカプセル膜にPEGを加えると、表面は柔らかくなった。赤血球表面は負に帯電しているので、表面が正に帯電した粒子との相互作用が大きいと予測したが、電荷よりも表面の柔らかさに大きく依存することが示された。
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