健康教育は、現代的な教育課題であるいじめ、登校拒否、学級崩壊をはじめ、心の健康、性の逸脱行動、未成年の飲酒や喫煙、薬物乱用などの心身の健康に深く関わる課題をその内容とする。学校現場でこのような課題の解決が急務となっている昨今、教員養成段階での健康教育の充実が必要である。教育職員免許法は、これらの現代的課題はもとより社会の急激な変化に伴う国際化や情報化への対応の必要性から、これまでの教科科目重視の立場から教職科目を重視した教員養成カリキュラムへとその基本構造を転換した。 本研究は、21世紀の教育を担う教員の養成を責務とする大学における健康教育の理論の再構築を図るとともに効果的な実践の在り方について考究を深め、今後の教員養成カリキュラムの改善と健康教育の充実に資することを目指して展開した。学校教育の成否は児童生徒の教育指導に直接かかわる教員の資質や能力に負うところが極めて大きいため、児童生徒の心身の健康に深く関わる健康教育の指導理念や指導法の基本は教員養成段階で最小限習得させておくべき基礎的事項といえる。 本研究においては、研究分担者や研究協力者との共同研究により、健康教育を含む教職科目を教員養成カリキュラムに的確に位置付た基本的構造図の試案を示すとともに、実際の講義における実践を通じて、ライフスキル手法を取り入れた指導法の研究開発や講義用テキストの作成などにおいて成果をあげた。また、健康教育の理念、目的、内容などについてはへルスプロモーションの考え方を基本に据えてその解析を行うとともに、前述した多くの現代的健康課題やこれまで取組みの少なかった死の教育の実践の在り方などについても考察を深めることができた。
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