研究概要 |
本研究では,CETEDOC Library of Christian Latin Texts"と『トマス・アクィナス全著作データベース』を基礎として,他のすでに電子化されたテクストを用い,またそれ以外のものについても電子化を進めながら,西欧中世の倫理学を中心とする語彙データベースを構築し,これに基づいて,哲学的諸概念に関する思想史的研究を行った。 1.語彙については,(1)学問論全般(哲学・倫理学・神学など),(2)徳論の諸概念(倫理徳,知的徳,枢要徳,神学的徳,聖霊の賜物など),(3)法学的概念(自然法,永遠法など),(4)人間論(人格,自由意志,良心など),(5)その他,を大項目として整理した。 2.思想史的研究としては,(1)13世紀における神学概念の成立,(2)ペルソナ(神の位格および人格)概念の成立,(3)倫理的資質(ハビトゥス)概念を中心に行った。その結果,(1)については,12世紀に翻訳・移入されたアリストテレスの学問論(『分析論後書』『形而上学』など)が,論証的な学問としての神学の原理および方法の確立に重要な役割を果たしたこと,(2)については,中世倫理学における「人格」としてのペルソナ概念は最終的なものではないにしても,近代的人格概念の萌芽と考えることができること,(3)については,アリストテレス倫理学の基本概念である資質(ヘクシス)・徳(アレテー)概念が中世の資質(ハビトゥス)・徳(ヴィルトゥス)概念に引き受けられた際の連続性と断絶を明らかにした。 3.データベースの公開に関してはネットワーク的に提供するには至っていないが,今後とも,技術的な問題とともに,著作権的・ネットワーク的問題について研究を進めることで実現をはかっている。
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