両大戦間期のヨーロッパ、特にウィーンに知的土壌を持つといわれているゲームの理論の社会思想史的背景とその意味を検討する基盤として、本年度は特に、基本視角である「遊び」と「闘争」の概念を概観し、明らかにした。 第一の「遊び」の概念については、1920年代にウィーン学団のメンバーを中心に行われた論理学・数学の見直しの動きが、ゲームを分析する射程を持っていたこと、またそれがK.メンガーを介して、ヴィトゲンシュタインのいう言語ゲームの考え方に通じることが明らかになった。研究代表者はこれを、1998年7月中旬にウィーンで行われた国際学会(10^<th> International Conference on Socio-Economics)において、「ゲームの理論形成過程においてK.Mengerの果たした役割」と題して中間報告した。 第二の「闘争」の概念、あるいは権力、政治的概念との関わりについては、特に1920年代のウィーンを中心とした経済学が「社会」そのものを分析対象とし始め、当時次第に勢力を強めていた全体主義的勢力と何らかの意味で関連していることがわかり、その中心的なイデオローグであったO.シュパンの全体性の思想、またこれに抵抗する立場を確立していくF.A.ハイエクの自由主義的思想を詳細に検討することの必要性が明らかになった。前者についてはすでに研究会で中間報告を行い、後者については1999年3月下旬に行われる研究会で、中間報告を行うことになっている 来年度はこれらの成果について最終報告を行い、論文としてまとめる予定である。
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