研究概要 |
処理と記憶の二重課題によるワーキングメモリ容量の個人差の各種課題により測定されるリソースの明確化を目的として,以下のような研究を行った. 1. ワーキングメモリ容量測定課題の収集と先行研究から示唆される課題特性の整理 先行研究で用いられている測定課題を収集した結果,言語的材料を用いた課題が全体に多く,一部に視空間的材料を用いた課題も見られた.視空間的な課題と言語的課題との相関は,言語的課題相互の相関よりは低く,言語的/視空間的なワーキングメモリ容量はある程度異なったリソースであると考えられる. 2. 言語的成分と視空間的成分を組み合わせた課題による処理と記憶のトレードオフの検討 ワーキングメモリ容量測定課題の構成として,処理成分と記憶成分にそれぞれ言語的な材料と視空間的な材料を準備し,これらの組み合わせによる4課題を作成した.各課題について処理成分の難易度に2水準を設け,処理の難易度と記憶成績の関係から,ワーキングメモリ容量における言語的/視空間的成分の関係を検討した.この検討は現在も進行中であるため最終的な結論ではないが,処理成分と記憶成分が同質の材料から構成された課題の場合に,そうでない課題の場合よりも処理成分の記憶成績への影響が大きいという傾向がうかがわれている. 3. 児童を被験者とした言語理解および計算を対象とした課題特性の相関分析研究 他に,児童を対象として言語的材料をもちいた課題と視空間的な材料を用いた課題の関係についても検討している.年齢を統計的にコントロールした後では両課題間の相関は低く,ワーキングメモリ容量は言語的なものと視空間的なものでは異なったリソースである可能性がここからも示唆されている.
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