昨年度は、Pulfrich効果における見えの運動方向と奥行き効果の関係を、斜め線分のみかけの運動方向をランダムドットの運動によって捕捉することによって検討した。その結果、ランダムドットが両眼提示の場合、知覚的運動方向の変化に伴って知覚的奥行きにも変化が起こり、ランダムドットが単眼提示の場合には、運動方向の知覚と奥行き効果が分離することが示された(99年ECVPにおいて発表済み)。今年度は、まずPulfrich効果を利用して視差におけるintrinsicエッジと運動におけるintrinsicエッジの分離という観点から、バーバーポール錯視について調べた。その結果、線分のエッジの解釈によって複数の知覚が生じた。立体視システムにおけるエッジのintrinsic-extrinsic判定が曖昧になることによって奥行き効果が変化し、その奥行き変化に伴って運動視システムのintrinsic-extrinsic判定が影響を受けて知覚的運動方向にも影響が出るものと考えられる。また、運動方向の知覚における全体と部分の関係がPulfrich効果にどのように影響するか、plaid様運動を用いて調べた。この場合、眼球運動をコントロールして提示することによって、それぞれの斜め線分が奥行き方向に分離して知覚される場合があることがわかった。このことからPulfrich効果では全体的な運動方向の決定に先立って立体視システムが奥行き効果を生じさせ、それが全体的な運動の構造化過程に影響を与えることが示唆された。また、静止時における斜め線分の奥行きの捕捉については、複数の視差方向と複数の線分方向を組み合わせたパタンによって、両方向が一致した場合にのみ奥行きの捕捉が起こることが示され、これにより昨年度の結果が説明された(2000年冬季視角学会のおいて発表済み)。
|