研究概要 |
1. 文献研究 American Psychological Associationのデータベース等を利用し,help-seekingをキーワードに1970年からの研究156論文を抽出した。この論文を対象に,文献研究を行い,ソーシャルサポートと被援助志向性の関連,被援助志向性に関連のあるその他の変数についての過去の研究をレビューした。 2. 質問紙調査 アジア系留学生のソーシャルサポートと適応,被援助志向性の関連を明らかにするために,98年10月〜11月に国立大学の社会科学系学部,大学院に在籍する,中国,台湾,韓国の留学生384名を対象に質問紙調査を実施した。296票を回収し,最終的に264票を有効回答とした。質問紙は,(1)学習・研究,心身健康,対人関係,住居経済の各領域の適応尺度,(2)各領域で専門的ヘルパー(保健センターの医師・カウンセラー,留学生センターの相談部門教官,留学生担当教官),役割的ヘルパー(指導教官,日本語教師,留学生担当職員),ボランティアヘルパー(同国人留学生,日本人学生)から過去一年間にもらったサポート,(3)今後このような問題が認められたときにどのヘルパーに相談したいか(被援助志向性),(4)留学生の援助や援助者に対する意識を尋ねた。質問紙は韓国語,中国語に翻訳された。 ソーシャルサポートと適応の関連を一要因の分散分析で検討した結果,学習・研究領域の適応に関しては役割的ヘルパーからのサポート,対人関係領域の適応に関してはボランティアヘルパーからのサポート,住居経済領域の適応に関しては,専門的ヘルパー,役割的ヘルパー,ボランティアヘルパーからのサポートの主効果が認められた。主効果が認められたヘルパーからのソーシャルサポートと被援助志向性の関連を調べたところ,相互に中程度の相関が認められた。また,被援助志向性には援助や援助者に対する意識が関連していることが明らかになった。
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