研究概要 |
本研究は,集団の性別構成比が勢力の性差をどのように生み出すのかを検討しようとするものである。本年度は,性別構成比が自己の勢力認知に及ぼす影響を吟味し,またそれが実際に集団意思決定過程や集団作業に反映されるかどうかを実験的研究によって検討した。第一段階として基本的な性別構成比の効果を把握する必要があるため,集団課題は性別適合性において中性なものとした。具体的には,大学生被験者157(男53,女104)名を5〜6名から成る小集団に分け,各集団内でコミュニケーションおよび意思決定を必要とするゲーム課題(各集団メンバーが持つ断片的な情報に基づいて1枚の地図を完成させる)を遂行させ,集団間でその成果を競わせた。その際,各小集団の性別構成比を操作して,男性多数群(男性4〜5名・女性1〜2名),女性多数群(男性1〜2名・女性4〜5名),均衡群(男女とも各3名),および統制群(全員女性)を設定した。 結果は次の通りである。(1)勢力認知に関して,男性多数群の男性と均衡群の男性は,統制群(女性)より自分の発言権が低いと認知していた。集団メンバー相互評定によると,男性多数群の男性は統制群に比べて実際に課題貢献度が低かった。ただし,公式または非公式リーダーとして出現する頻度に性別構成比の影響は認められなかった。(2)女性多数群の男性と均衡群の男性は,統制群に比べて課題遂行中の緊張度が高かった。(3)性別構成比による課題達成度の差は見られないが,均衡群の課題遂行の効率は統制群より低かった。以上の結果から,課題の性別適合性が中性的である場合,性別不均衡群(どちらかの性別の方が多い)より,むしろ均衡群に勢力認知や課題遂行を巡る問題が発生しやすいこと,また女性より男性の方が性別構成比の影響を受けやすいことが示唆された。今後,他の課題(男性適合的,もしくは女性適合的な課題)条件や組織場面でも同様の結果が見られるかどうかを検討する必要がある。
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