本年度の研究は、以下の3点に要約される。1.昨年度の研究成果をまとめて、第3回アジア社会心理学会(平成11年8月4日〜7日、於:台湾)で発表した。2.昨年度行った予備調査の結果と、これまでの組織シチズンシップ行動の尺度を参考にしながら、「日本版組織市民行動尺度」を作成した。その尺度とそれに関連する他の質問項目を掲載した調査票を作成した。3.調査を実施し、調査結果の分析を行った。 1.発表題目は、"Research on voluntary behavio in organizations of Japanese employees:Rethinking of the relationship between organizational justice and organizational citizenship behaviors"であった。3.調査回答者の内訳は以下の通り:(1)留置法によって、4社の企業から56名の回答が返送された。(回収率69.1%、無回答1名、さらに回収予定のデータあり)。(2)大学の社会人講座で、24名が回答に応じた。(3)郵送法によって、202名のうち131名の回答が回収された(回収率65.2%、無効回答なし)。合計209名が分析の対象となった。 分析結果の要因は以下の通りである:(1)組織市民行動尺度の項目を因子分析した結果、先行研究における因子(利他主義、礼儀正しさ、誠実さ)だけでなく、日本独自と思われる因子(清潔さ)が見出された。また、先行研究では1つの因子だった利他主義が2因子に分離した(組織内利他主義、組織外利他主義)。(2)回答者の属性のうち、女性より男性の方が組織外利他主義の得点が高く、従業員数で大きな組織よりやや小さい組織の方が組織外利他主義の得点が高かった。(3)全般的にいって、職場での気分が良い人ほど、組織市民行動をよく行っていた。(4)組織から物心ともに支援されていると感じている人ほど、組織市民行動をよく行っていた。(5)組織の手続きが公正であると認めている人ほど、組織市民行動をよく行っていた。
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