研究概要 |
これまでは,研究I:“学生"および“おとな"の心理的特性に関する調査研究を中心に行ってきた。本研究では, “おとな"的心性を獲得する過程を,学生が“こども"から“おとな"へと移行していく様子と考え,その移行を検討する上で着目すべき点を明らかにすることを最初の目的とした。 まず“こども"や“おとな"を判断するときの指標をとらえる項目を作成した。自立尺度などの先行関連研究から項目を選出し,加えて学生や社会人からも,“おとな"“こども"と判断される人それぞれの特徴を,自由記述で回答することを求め項目化した。その結果,計213項目が作成された。続いて,この213項目の弁別力を検討する質問紙を作成し,大学や社会人を対象として実施した。得られたデータを基に,147項目を選出した。さらに,これらの項目についてKJ法による分類を行い,その分類結果を参考に100項目を選出した。最後にこの100項目を用いて,大学生に対して調査を行い,学生が自分自身を判断する基準になっていると考えられる52項目を選出した。以上のような手続きを経ているため,この52項目は, “ことも"“おとな"を判断する,第3者からの判断基準になるものであり,かつ自らが自分自身を判断する基準にもなるものと考えられる。 次に,“こども"から“おとな"への移行を見る視点を明らかにするために,先の52項目を対象に因子分析を行った。その結果,「社会的かしこさ」「世俗迎合」「冷静な判断」「他者への配慮」「協調性」「責任感」「自己陶酔」の7因子に分類できることが明らかになった。そしてその得点の変化状況から,学生が「自己陶酔」を捨て去り,またその他の因子の内容を身に付けることが,“おとな"に近づくこと,すなわち“おとな"の心理的特性の獲得と考えられることが示された。 なお追跡研究である研究IIにも,順次取り掛かっており継続中である。
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