以下の2つの調査を実施した。 1. 放射線の人体への影響の認知に関する実証的調査 ゼロリスクが可能であるかどうかは、リスク源からの人への作用に関して閾値があるかどうか、すなわち、量一反応関係において「これ以下なら無害」という用量が認められるかどうかにかかってくる。つまり、閾値がある場合はそれ以下の値を安全基準値とすることでゼロリスクを確保することが可能であるし、閾値が無いという場合には、原理的にゼロリスクは不可能ということになる。そこで、「放射線の人体への影響に閾値があると思うか、無いと思うか」さらに「今後、原子力発電所はどうすべきと思うか」を尋ねる質問紙調査を実施し、続いて、原子力利用の危険性を訴求するビデオを視聴した後、先の質問に対する回答がどのように変わるかを検討した。分析の結果、ビデオ視聴により閾値がないという方向へ回答は変化し、同時に、原子力発電所も減少・廃止すべきとの方向へ変化しやすいことが示された。ただし、閾値の認識と発電所の存廃についての考えとの間には直接の関係はないことが示唆された。 2. ゼロリスクの可能性についての質問紙調査 この分野の先行諸研究を参考に、61項目の活動や科学技術を採りあげ、「それを原因として死ぬ人が誰もいなくなるということが、いずれ技術的、あるいは、制度的に可能になると思うか」および「それを原因として死ぬ人が、1人も出ないようにすべきと思うか」という質問に対して7段階評定尺度で回答する質問紙調査を実施中である。質問紙回収後はそれぞれの質問への回答に因子分析を行い、ゼロリスク可能性の認知を規定する要因を抽出し、ゼロリスク可能性に関する認知地図を作成する。
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