1977年から1997年にかけて計6回実施された全国調査のデータを、時点間比較が可能なよう整備し、世帯の経済生活と意識の関連について、回答分布の推移を含め、以下の点を明らかにした。 第一に、高齢期においては居住形態、すなわち「単身」「夫婦のみ」というような高齢者世帯であるか、あるいは同居者(主として子ども)のいる世帯であるかという差異が、有職率、世帯収入、収入に占める年金の割合など、フローの部分での格差を生んでいること、また金融資産保有額にも差異があることが確認された。 第二に、上の結果として高齢者世帯とそれ以外の高齢世帯では、生活全般の豊かさの実現度の認識に、有意な差異がみられることがわかった。 第三に、59才以下の人々の9割が、自分が高齢期を迎えたときの日本社会のイメージが暗いものであると捉えていること、若い年齢層ほど公的年金への信頼度が低下していること、公的年金で生活費をまかなえる度合いは1985年から97年の12年間で、かなり低くみなされるようになっていることがわかった。 第四に、老後にために貯蓄しているとする世帯は、1985年の42%から徐々に増加し、1993年にはほぼ50%となったが、1997年には45%となってはじめて減少し、老後生活費の予想額の上昇と公的年金の信頼の低下という推移とは、ある種のミスマッチがおこっていることがわかった。 第五に、老後の生活への不安感については、「不安感を感じる」とする者は、1985年に約50%だったのが、1997年には約90%にもなっていること、世帯収入による不安感の差異がみられること、金融資産保有が不安感を低下させていないこと、年金への不信が不安感を高めていることがわかった。 以上の分析結果をふまえ、平成11年度に老後の不安感についてより詳細に分析する調査票調査を実施する。
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