高齢期の生活の不安感と、高齢者福祉制度に対する意識の間に、現在どのような関連が見られるのかを解明するため、長野県松本市において調査票調査を実施・分析した。 調査の基礎情報については、(1)対象者:長野県松本市在住の70歳未満の有権者女性、(2)実査法:個別面接法、(3)実査時期:平成11年9月、(4)抽出法:二段無作為抽出、(5)計画サンプル数:300、(6)有効回収数:229(回収率76.3%)であった。 調査結果については、第一に、老後の生活の不安感は大変高いことが確認された。経済的な面での不安については「不安だ」とする者が72.8%、介護など日常生活の世話・手助けという人的資源への不安については、75.3%にものぼる。年齢世代別に見ると、経済的な不安では40歳代が80.3%と最も高く、60歳代で、依然高水準であるものの61.7%まで低下する。一方、人的不安では20歳代で90.5%ときわめて高く、年齢が進むにつれて低下するものの、60歳代で再び上昇し78.7%となっている。特に高齢期の生活を目の前にしている人たちが、その経済生活以上に、日常生活の実際的なサポートに不安を感じていることは、制度の設計に際してこれまで以上に緊急に注目されるべきである。また、不安感の程度には経済階層差がみられた。 第二に、高齢者福祉制度に対する信頼感は大変低いことが確認された。公的年金制度を信頼しているのは50歳代以下で12.4%であった。介護保険制度については「自分の生活に役立つ」と考えているのが43.7%に止まった。 第三に、年金への信頼と経済的不安には関係がみられ、年金制度への信頼が不安感を低下させる機能があることがわかった。一方、介護保険制度の有効感は人的側面での不安感を低下させていない。介護保険制度は、高齢社会への安心を与えるものとしていまだ機能していないことがわかった。
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