本年度は当初の計画通り、「創発性」の概念をめぐって、二つの方向から研究を行った。 1、 文献研究:これまで研究対象としてきたG.H.Meadの理論における「創発性」のより詳細な吟味を行った。、人間的な意識発生のプロセスそのものに、そのそも創発性の契機が内在していることを、Meadの議論を播きながら確認していった。 2、 実態調査は、いくつかのネットワーク型組織の調査により行った。主な成果は次の二つである。 (1) 非日常的なネットワーク型組織として、阪神淡路大震災時に活動した災害ボランティア団体について考察を進めた。調査だけでなく最近の資料文献も検討しながら、災害ボランティアという創発組織の社会システム内での意味づけを考察した。その際、社会システムの動態内における、創発型組織の果たす機能という点に注目し、非日常的創発的組織の持つ開発的機能、また当該社会システムの機能不全部分への補完的機能との二つの機能の関係を明らかにした。 (2) 日常的なネットワーク型組織の研究として、青森県相馬村および稲垣村の地域活性化団体をとりあげ、その地域社会システム内での位置を比較対照的に調査分析した。この方向からは、地域社会からはみ出ているかのようなネットワーク型組織も、地域社会の文脈の中で、創発作用を高めたりも低めたりもすることを確認した。また以上の研究を通じて、「創発性」の社会学と「共同性」の社会学との両者の接続が必要であるとの感触をえたが、詳細な分析は来年度に持ち越された。
|