明治以降今日に至るまでの東北農村の「いえ」と「むら」の有り様を多角的にとらえるため、次の調査対象地を中心にフィールドワークを行った。山形県庄内地方については戦前期の「農本主義」運動の性格の解明、青森県津軽地方については「りんご」生産をめぐる個別経営と「むら」的共同性の関連、、青森県南部地方については、女性リーダーを中心とする産直センターの設立と地域への影響、宮城県大崎地方については稲作経営と生産の複合化推進の現状等について、資料収集、聞き取りを行った。結論的にいえることは、もちろん地域によるさまざまな個別的な差異はあるにしても、東北農村においては地域的紐帯としての「むら」的性格は高度経済成長期を境に急速に失われつつも、しかし首都圏や地方大都市と比べるとなお生活・生産の共同的性格は失われていはいないこと。さらに農家の「いえ」的性格については、いえ=「伝統的」「封建的」生活組織ととらえるのではなく、「生産と生活の共同的経営体」と理解すれば、依然として「いえ」は存在しかつ日本農業の将来を考えても「いえ」的経営は必要不可欠であろうという論点が浮き彫りになった。
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