東アジアにおけるジェンダーの比較、とそれをさらに延長して組織の問題を考えるという観点で研究を続けてきた。比較の観点からは、特に台湾に焦点を置いて、比較を進め、その成果は日本台湾学会で発表し、さらに『日本台湾学会報』第1号に「比較の中の台湾」という形で公表した。母役割規範が比較的希薄で、したがって女性の社会進出が大変進みやすい、台湾の事例について、日本の規範を逆照射するような意味を持つものとして紹介できたと考える。また韓国については、この期間中にはまとまった成果を出すことができなかったが、日韓文化交流基金から引き続き研究助成を受けられることとなり、それを利用しながら、継続していくこととしている。 家族規範と組織に関する問題については、特に高齢社会を迎えるに際して、家族構造の差異が、高齢社会の乗り越え方にどのように影響するか、といった観点から研究を進めた。前年度のSSM調査の結果に明らかなように、老親同居規範の非常に強く残る他の東アジア諸社会と異なり、日本の場合は、老親の同居規範が急速に弱まっており、そのこととの関係で、介護保険に代表されるような社会福祉制度の必要性が非常に高い。そのことの関係で、これからの社会政策では、専業主婦層の保護を撤廃して、労働力化を促し、納税主体として活用していくような政策が不可欠になると考えられる。こうした議論については、「高齢社会と家族」というタイトルで、論文を発表することができた。
|