本年度は、寄せ場の地域変動過程や、社会・経済・政治構造的な位置づけに関わる必要な文献資料の収集を主に行なった。 まず、文献資料の収集については、寄せ場暴動に関わる新聞記事の収集、ならびに地域の労働・民生関係行政に関わる文献の収集を行なった。同時に、日本の都市政策・失業対策事業の歴史に関わる文献の収集も行なった。 また、数回にわたり、大阪市西成区の(通称)釜ケ崎地区においてフィールド調査を実施し、地域の町並みの変動過程や、生活・労働環境の変化についてのいくつかの知見を得た。 それらの諸データを整理する中から、数十次にわたる寄せ場暴動の変質過程は、寄せ場という固有の地域に対する社会的な位置づけの変化を反映しており、それは<従来の「場所の秩序」としてのありかたと、それに収まりきらない「層」としての拡散のせめぎあいのプロセス>としてとらえるという分析視角を必要としていることがわかった。
|