1.権利擁護(アドボカシー)制度の政策理念、内容、歴史的背景と現在の展開状況について、概要を把握することができた。アメリカに関しては、カリフォルニア州及びウィスコンシン州のアドボカシー制度に関与し、また数年の対日経験により日本の精神医療事情にも詳しいウィスコンシン大学教員James J.Mandiberg氏のレビューを受けることができ、次の点を明らかにすることができた。(1)脱施設化と退院患者の地域での生活及び医療のサポートプログラム推進を柱とする1970年代以来のアメリカの精神医療改革の進行が、入院患者の権利擁護に関する法制度の展開を大前提となっていること。(2)1980年代の連邦レベルでの権利擁護法制の整備により各州への予算配分が行われるようになって10年余りで、権利擁護制度が精神医療政策として定着しつつある背景として、各州レベルでの具体的な権利擁護活動に関する年度毎の活動評価が蓄積されていること。 イギリスに関しては、医療改革に関する基本文献の収集・調査から、1980年代の精神医療法制の転換と入院患者の権利擁護に関する政策の展開の関連が明らかになった。 2.日本で精神障害者の権利擁護活動を行っている東京精神医療人権センターへのインタビューから、依然として病院・施設依存型の医療が中心となっている精神医療制度の中で様々な人権侵害が起こっていることが確認され、施設内に立ち入る強い権限を有する権利擁護システムの必要性が、地域サポート型医療への転換とともに求められることが確認された。当事者運動の実態の把握及び権利擁護への取り組みについては今後の課題である。
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