本研究では、精神障害者・家族の関係を、ケアの受け手・ケア提供者として固定的にとらえる視点からではなく、障害者・家族が相互に規定し合う双方向モデルとして位置づけ、障害者・家族双方の回答データの分析・考察を通じ、関係性の類型及び、その背景要因を同定した。障害者-家族の相互関係が、敵対的な関係あるいは相互依存的な関係に陥ることが、障害者・家族双方にとってストレスフルな事態となる。また、このような関係性に導くような社会的構造-固定的な障害(者)観、残余的福祉モデル、近代家族の結合原理や役割布置など-が、いまだ強固に存在しているため、敵対的・相互依存的関係から脱却することが難しい状況にあるが、こうした構造の圧力を相対化し、自らの文脈においてその関係性を問いなおすプロセスへ進展させる契機として、家族会・当事者活動などのネットワークへの参画(あるいは形成)が、主なものとしてあげることができる。
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