本研究の目的は、わが国の大正期から昭和戦前期を対象として、この時期の女子中等教育への進学者層およびその家庭のアスピレーションの実態を実証的に明らかにし、さらにこの実態を社会学的に考察することにあった。 この目的のため、本年度の研究においては、戦前期において進学準備校的な性格の強い師範学校附属小学校を対象として、その社会的性格に関する分析をおこなった。 具体的には、大阪府において明治末に設置された師範学校附属小学校を対象として選定し、創立以来、第二次大戦終戦時までの全在学者について、その学籍情報(保護者職業・学業成績の変数を含む)ならびに進路情報をデータベースに入力した。特に女子児童を対象としつつ、男子児童との比較も視野に入れながら分析をおこなった。 ここで明らかになった主要な知見は、以下のとおりである。 (1)女子中等教育、とりわけ普通教育への進学の基盤は、大正期から昭和戦前期の時期において、いわゆる旧中間層から新中間層へと急激に移行した。 (2)戦前期においてすでに、学業成績による進路の階層化が生じていた。 (3)進学先の選択においては、学業成績の影響とは独立して、父職の影響が見出せる。また、父職の影響のパターンは、男子と異なる。 なお、ここで見出されたアスピレーションのパターンは、当時の新中間層的なライフスタイルの構成要素であることを推察させるが、この研究ではこのライフスタイルの内実にまで踏みこむことはできなった。これは今後の課題である。
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