本研究は、対人専門職の職業的社会化におけるメカニズムおよびその問題点を明らかにしようとするものである。今年度は、看護系学校と福祉系学校、および大学生に対して、アンケート調査(1月)と質的インタビュー(10月と2月)を実施した。その結果、およそ次のような知見を得ることができた。 1. 対人専門職の養成課程にある学生は、他の一般大学生にくらべ、情緒的な関心が強く、勉強や職業に対するアスピレーションも比較的高い。逆に、自己意識の動揺経験については、大学生のほうに多くみられる。 2. 対人専門職の養成課程の中で、一定の階層分化の傾向がみられた。すなわち、短大/大学の課程にある者は、情緒的かつ高いアスピレーションをもつのに対して、各種学校の課程にある者には、道具的な関心や低いアスピレーションを持つ者が少なくない。 また、これらは、それぞれ親学歴や出身地の人口規模とも関連している。 3. それぞれの養成課程では、極めて対照的な職業的社会化のメカニズムが機能していると考えられる。というのも、高学年(3年次)においては、短大/大学で比較的道具的な関心が強く、各種学校で一定程度の情緒的関心がみられるようになっていくからである。 4. 若手の現役看護婦に対するインタビュー調査では、短大・大学卒業生の間で、現場への適応や職業意識のあり方が二極分化する傾向がみられた。 ただし、以上の知見は、いまだ仮設的な段階を脱していない。このような現象が観察された背景的な要因(制度、受験市場の編成、就職状況、歴史的過程)を踏まえて、より精緻な分析を行っていくことにしたい。
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