今年度は、打ち合わせを含めて5回にわたり合計20人の薬物使用者に直接インタビューを行った。そこでは薬物使用と生活パターンについてのデータを収集し、その収穫結果から、それらの使用パターンがどのような要素に基づいてコントロールされているのかを英米の「コントロール使用者」研究を参照しつつ考察した。そこで明らかになったコントロールの要素に関する仮説は以下の通りである。 1 使用開始時点でのコントロール(1)法との関係:逮捕の危険は初心者時点は問題にならないが、経歴を経るにしたがって問題となる傾向がある。(2)健康との関係:法よりもむしろ身体的危険性が初心者時点では問題となり、経歴を経るにしたがって問題とならなくなる傾向がある。(3)使用継続への学習:集団内で使用方法などを学習するとともに、集団内での役割取得を通じて薬物使用状況下における一般的な所作を学習する。 2 使用開始後のコントロール(1)意識的コントロール:個人的な使用規則を定め、それにしたがって使用することでコントロールする傾向にある。その際、定期的な時間的空間拘束(学業・就業など)が重要な契機となる。(2)非意識的コントロール:まず第一に薬物に対する個人的嗜好が自分が無理しない範囲での使用を可能にしている。次にしよう集団との関係がコントロールを強制している。さらに、集団との関係が「非コントロール使用者」との分化を促している。 次年度の研究はこれらの仮説を洗練すると同時に、検証することが主な目的となるが、同時に「非コントロール使用者」との比較も射程に入れたいと考えている。
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