本研究は、看護専門職者の専門性に関する発達プロセスを調査から明らかにし、看護の質評価を行うとともに、看護の専門性の拡大を障害している原因を抽出しようとするものである。量的調査と質的調査の量側面から、この課題に対しアプローチを行った。 結果、質的調査からは看護婦個人の専門性に関する発達プロセスを、個人が遭遇する出来事(ライフ・イベント)と個人の内的変化過程を職業アスピレーションとの関係から分析した。看護の専門性に関与する意識の変化は、課程教育を経た現任教育の段階で、本人の志向する方向とは異なる方向へ誘導されることが、職業アスピレーションの揺らぎに関与すると同時に、発達プロセスにも何らかの影響を及ぼすことが指摘できた。 量的調査においては、看護の専門性を擁護しかつ具現化するための道具だてとして、看護診断能力ということに焦点を絞り調査した。その結果、看護診断に対する威信は高いながらも、「看護診断は難しい」という感覚がマイナスに働き、看護診断に対するアンビバレントな感覚を生じさせていることがわかった。また看護診断は看護の専門性(患者ケアに関する要因)には必要と答えながらも、看護診断能力の向上とは関係しないとする傾向が明らかになった。また、看護診断ということが、看護の専門性・看護の質向上のためのツールとして、十分な認知が図られていない実態が明らかになった。この内容については、第6回日本看護診断学会学術大会において報告の予定としている。当初の計画に挙げていた、看護診断能力が高いと評価される人に同行しての調査は行えなかったが、看護診断に対する看護婦の認識や専門職意識との在り方には、示唆を得たと考える。 本研究から、看護診断への威信は抱きつつも実態の伴わない形で進行している現状が明らかになった。今後の課題としては、看護における診断能力は医師に台頭するためのものではなく、看護の専門性を深化させるための一方法として、具体的な戦略でもって普及・浸透させて行かなくてはならないことが指摘できた。
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