農村女性の労働は、家事労働者として、また農業生産面でも多々無償労働として位置付けられている。しかし、その一方で、とくに途上地域の農村女性は、生活面では男性に優位性を示している。「女性の生活労働(無償労働)」と「男性の生産労働(有償労働)」の分断的な研究のありかたをいかに社会的システムとして統合させていくか、などを研究の目的としている。本年度の調査研究の概要は、下記のとおりである。 1. 沖縄における統治・管理手段としての女性祭祀に関する研究:祭祀は単に「聖の領域」だけでは論じられない。集落を管理・統治する手段としての祭祀機能について、沖縄県知念村久高島、今帰仁村崎山集落、平良市池間島において調査をおこなった。久高島はいまなお土地の総有性を存続させている島である。土地の総有性と祭祀との関係を明らかにするために、農家悉皆調査を通じて祭祀に規定された土地の利用状況を把握した。今帰仁村崎山集落は、沖縄の農業先進地域でありスイカ単作が退行している地域である。女性の生産労働と生活労働について、年間4回の生活時間調査を実施中である。平良市池間島においては、かねてからの女性祭祀が農業生産や男性の漁業労働とどのような関係性をもっていたのかについて、また男性の祭祀のありかたについての研究・調査をおこなった。また池間島では、島の外部の働きかけによって祭祀が存続している一面も有しており、その社会的影響についての考察もおこなった。 2. タイ中部平原における持続的野菜生産システムと女性の役割:タイ中部平原で日本向けアスパラガス生産のおこなわれているラッチャブリにおいて、集約的野菜栽培地域での女性の持続的可能性のある農業生産と生活の取組についての予備調査をおこなった。
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