本研究は、政治的影響力の指標として、政治的有力者とのつきあい(関係的資源)をとりあげ、関係的資源と政治意識の階層間格差の実態、およびその規定因について、解明することを目的とする。本年度は、まず、最近の研究動向や問題点をまとめるとともに、SSM調査や、独自の統計的社会調査データの分析を行った。分析の結果、関係的資源の保有には、階層間、地域間格差が明確に存在するが、とくに小規模な市での保有の多さが目立つこと、社会的地位と、地域社会との関わりの双方が、資源保有の規定因となっていることなどが明らかになった。研究成果の一部は日本行動計量学会や日本社会学会において発表を行った。次に、独自の調査を実施した。予定では、今年度、次年度とも、東京周辺で調査を行う予定だったが、できれば農村部と都市部など、異なる性質の地域で調査を実施したいと考え、可能性を検討した。今年度については、幸い、宮城県の農村部での調査実施が可能となったので、11月より、1500人を対象として郵送法により統計的調査を実施した。母集団は、仙北地域の選挙人名簿に記載されている70歳未満の者とした。調査項目として、有力者との人間関係保有や、階層構造の評価、再分配への志向、その他の社会意識等を設定した。予算の制約などのため郵送法を用いたが、繰り返しお願い状を送付するなど回収率の向上につとめた。2月にはほぼ回収を終え、有効回収率は6割以上となった。3月時点でデータファイルの作成中であり、今後、分析の予定である。 本年度は、既存のデータの分析と調査実施を主に行い、分析結果をもとに学術雑誌に論文を投稿するとともに、博士論文を執筆中である。
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