民主主義は平等を原則とするが、現実の民主主義社会における政治的影響力は、全員が等しくはなく、階層的地位の高いものほど強い。本研究は、政治的影響力の指標として、政治的有力者とのつきあい(関係的資源)をとりあげ、関係的資源と政治意識の階層間格差の実態、およびその規定因について、解明することを目的とする。本年度は、前年度に引き続き、まず、最近の研究動向や問題点をまとめるとともに、SSM調査や、独自の統計的社会調査データの分析を行った。複数の政策志向について分析した結果、環境保護の重視など脱物質志向に対して、関係的資源保有量が規定力を持つことが明らかになった。また、再分配政策志向には、経済的資源が強い規定力を持つことが分かった。 次に、東京都にて独自の統計的社会調査を実施した。前年度は、宮城県の農村部で調査を行ったが、今年度は、農村部と都市部の比較可能なデータを得ることを目的に、東京都の北部4区(北区、板橋区、豊島区、文京区の、都立高校の第4学区に対応する地域)にて、10月より1500人を対象として郵送法により統計的調査を実施した。調査項目として、関係的資源、階層構造の評価、数種類の政策への志向、その他の社会意識等を設定した。調査票の回収には郵便留め置き法(調査票を郵送し、回収は学生調査員が訪問)を用いた。1月には回収を終え、有効回収率は約55%となった。3月時点でデータファイルの作成が終わり、今後、分析の予定である。これで、本科研費の研究期間以前の調査も含め、地方都市(仙台市)、農村部、東京の3地点のデータが、ほぼ完成した。 これまでの研究成果は、学会発表や雑誌論文として、別紙の通り発表した。また、研究成果の一部をまとめて博士論文として完成させ、1999年9月に博士号を取得した。
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