本研究は、対人関係行動に課題を抱える特殊学級に在籍する障害をもつ子どものコミュニケーション能力の育成を目的として研究者が開発したミニチュアプレィルームを用いた教育臨床実践をテーマとしたものである。ミニチュアプレィルームによる臨床実践は、後藤ら(1984)によって開発された集団指導法「行動空間療法」をミニチュアの世界に提示するものであり、個別指導形態を基本とした取組である。この指導によって、他者視点の取得や自己の行動のモニタリングを促すこと等が期待されている。なお、ミニチュアプィイルームの構築にあたっては、一部、ソシオメトリー及び箱庭療法の理論と技法を参考にしている。本年度は継続指導を実施してきている指導対象事例に関する分析、検討を進めた。その結果、指導回数の経過に伴って、ミニチュアプレィルーム場面と集団指導場面を関連づける行動が示され、さらには、日常の学級活動と関連づけた活動がミニチュアプレィルーム場面において展開されるようになったことが明らかにされた。なお、他の事例においては第1回目ミニチュアプレィルーム指導において集団指導場面が再現されている。また、指導初期の指導対象事例の集団指導場面における対人関係行動系とミニチュアプレィルーム場面における対人関係行動系には連関性があることが示されている。本事例の場合、ミニチュアプレィルームによる指導以前から、学級活動場面において他者視点の取得が認められる行動を表わしているが、初回のミニチュアプレィルーム指導場面において学級メンバーの顔写真の貼られた人形に対しても他者の視点にたった行動を示していることが確認されている。これらの研究結果は、ミニチュアプレィルームによる取組が指導対象左の日常の活動場面と連動させた観点からコミュニケーション能力の育成を図っていける指導の特性を保持していることを示していると考えられる。
|