今年度は、先行研究の文献調査と対象となる中学校の生徒文化について理解を深めるために、生徒を対象とした質問紙調査を実施した。2年間の継続調査であるため、本年度までで整理できる部分はわずかであるが、以下に記す。 まず、小学校から中学校への移行過程に関する研究は、心理学などでもなされており、ここでの関心にかなり近接したものも見られることが分かった。ただし、学校分化の差異という点をどれだけ強調するかという点で、先行研究と本研究との違いがある。また、Elliot et al.(1998)は、学校内での暴力問題を考察する際の視点には、1)社会的文脈を重視するパースペクティブ、2)ライフコースを重視するパースペクティブ、3)発達論的な視点に立つパースペクティブなどがあり、また、問題への解決に対しては、4)公衆衛生の観点からのアプローチも有効であるとしている。本研究は、この整理に依拠しながら、その意義を確認するとともに、また、問題解決策の策定においては、彼らが重視する講習衛生的な視点も応用して行くべきだと考えられる。 質問紙調査は、新入生が適応していく学校の生徒文化の内実をまずは幅広く理解することが必要だという関心から実施した。調査対象は、都内の6校の公立中学であり、サンプル数は約1200名である。このうちの2ないし3校において、来年度に観察調査を実施する予定となっている。この調査により、対象校の生徒集団が他の学校と比較して、意識や行動にどのような特徴が見られるのかを把握することができるようになった。なお、調査は現在実施中であり、結果についての分析は来年度以降になる。 また、当初の研究計画では、対象となる中学校にあがってくる生徒が通う小学校において、観察調査を実施する予定であったが、対象校との調整がとれず、今回は見送りとなった。ただし、この点については、来年度に調査対象校に新入生が入学した後に、彼らを小学校で受け持った担任に対してインタビュー調査を実施することで、捕捉する予定である。
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