本研究の目的は、1920年代を中心とする中国の教育改革期にあってアメリカ「新教育」に触発されて展開した教育方法(とりわけ教授法)の改善の取り組みが、教育研究者や実践者の教育方法意識の自覚化と密接不可分な関連を有したことを明らかにすることである。特に今年度の課題は、本研究のこれまでの成果について中華人民共和国にて報告を行い、同国の研究者から指導・助言を得ることにあった。 今年度、中央教育科学研究所の宋恩榮(近代教育史研究者)、王鉄城(中国陶行知研究会主任)両氏をはじめとする研究者等から具体的な助言等を得、また本研究の今後の課題や方向性、中華民国期研究の動向についても教示を得て、さらに今後の共同研究や研究交流等について検討した。 加えて、北京図書館や、中央教育科学研究所や北京師範大学の附属図書館等において近代中国教育関係図書・雑誌を調査し、『中華教育界』や浙江省教育会編『教育潮』、国立東南大学教育研究会編『教育匯刊』等における1920年前後の教育方法関連論文を収集し、さらに『楊賢江全集』(河南教育出版社)や『方与厳教育文集』(四川教育出版社)等の文献も入手した。 なお、本研究の成果の一部については、今年度の関西教育学会第50回大会において「中国における新教育の受容(3)ー楊賢江と学習法ー」と題して発表し、現在、同学会紀要第23号(1999年6月刊行予定)に投稿中である。また来年度にむけて、所属学会である日本教育方法学会やアジア教育史学会等での発表、年報や研究紀要等への投稿を目指して研究、執筆を進めているところである。
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