本研究1年目においては、多様な論点を有しつつ展開されている「学校の自律性」をめぐる議論について、ブレーメン、ハンブルク、ノルトライン・ヴェストファーレン州の事例を中心に分析を行った。 それをふまえ本年(第2年目)は、具体的な「自律的学校」構想の展開について検討し、政策上、とりわけ「学校プログラム(Schulprogramm)」の形成・実施という形で焦点化されてきていることを明らかにした。ブランデンブルク、ブレーメン、ハンブルク、ヘッセン、メクレンベルク・フォアポンメルン、ニーダーザクセン、ノルトライン・ヴェストファーレン、シュレースヴィヒ・ホルシュタインの各州においては、学校法を改正し、学校実験の枠内ではあるが、個々の学校において教育上の「プロフィール(Profil)」(個性)を書き記した「学校プログラム」を形成し、それを実施することによって、「自律的学校」を実現しようとしている。学校プログラムは、一定の期間ごとに評価され、改定されるものであり、このようなサイクルにおいて学校の発展を目指すものとなっている。 通常、こうした学校のプロフィールを決定するという重要な任務は、学校会議に委託されている。このような学校プログラムの形成・実施・評価過程には、個々の学校における財政上の裁量余地を拡大することや、人事要件について関与することもまた含むことが意図されている。 ただし、こうした取り組みは始まったばかりであり、ようやく具体的な問題が浮上し始めた段階である。学校プログラムと個々の教員との間のコンフリクトをはじめとする現実の課題については、あらためて検討する必要がある。
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