本年度は、本研究の課題と関わる先行研究の整理・検討と、本研究における分析対象となる史料の収集を中心に研究を進めた。 前者については、平安時代の政務運営に関する先行研究を検討し、これまで発表してきた私見の研究史的位置づけを試み、それをふまえて本研究において追究するべき課題を明確にした。 具体的な研究の前提となる後者については、平安時代の貴族が書き残した日記(古記録)から、政務運営の実態を知り得る史料の収集を行った。そのために、現在刊行されている古記録と、収集史料の整理を効率的に行うためのパーソナル・コンピューターを購入した。 本年度は、上記のように、研究の基礎となる作業を中心としたが、それを進める中で、自ずから先行研究の内容の検証、すなわち、先行研究が明らかにしてきた平安時代の政務運営システムについての理解の妥当性を検討することができた。 それをふまえて、平安時代の国家における最終的意志(国家意志)決定のあり方、具体的には天皇と公卿がそれぞれに果たした機能を明確にすること、そして、そのような国家意志決定のあり方をとった平安時代の国家を、歴史的にどのように位置づけるのかが本研究の解明するべき課題であるが、それらは次年度に果たすつもりである。
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