摂津の大坂(石山)・有岡(伊丹)・堺・平野・尼崎・塚口・小浜・池田・花熊・高槻と河内の富田林・大ヶ塚・久宝寺・高尾・若江を取りあげて、都市構造の分析をおこなった。またこれらと比較検討するため、山城京都、寺内町としては和泉貝塚・山城山科・越前吉崎、城下町としては下総結城・下野小山・相模小田原・尾張清須、越前一乗谷、近江安土などを分析した。とりわけ、都市全体を囲繞する惣構(そうがまえ)に注目し、その空間構造ならびに惣構を成立させる都市社会構造を解明した。 その結果、惣構が、(1)京都・堺や寺内町など畿内のいわゆる「自治都市」で先行してあらわれること、(2)城下町においては河内高屋や摂津池田が全国最初であること、(3)織田信長の影響下にある城下町の中でも、摂津有岡・高槻・花熊や河内若江など、大坂本願寺を包囲する摂津・河内の城下町で先行し、近江安土などはむしろ遅れることを明らかにした。このことは都市の惣構が摂津・河内をはじめとする畿内の都市で発達し、それが城下町に影響を与え、やがて織豊系の城下町に採用されてゆくという道筋を示す。 こうした発展の系譜は、単に惣構だけに限定されるものではなく、都市づくりの基本的な理念の展開を示すといえよう。 なお、以上のような研究成果を公開するため、複数の論稿を発表した。惣構論については別稿を準備中である。また、有岡城跡国史跡指定記念シンポジウム、関西近世考古学研究会大会などでも成果を報告した。
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