研究概要 |
本研究の目的は、近代日中関係における「中国通」「日本通」外交官の役割を究明し、再評価することである。この課題を研究テーマに選定した理由の第一は、従来の研究は軍の外交への干渉が強調され、外務省独自の外交政策については、限定的にしか議論されてこなかったという学界の実態への反省である。第二の理由は、中国の対日政策についての研究も、外交官に焦点を絞って行ったものはほとんど存在しないという空白を埋めるためである。 聞き取り調査や先行研究を行った日中双方の学者のレビューを受けることを、主な作業に設定した平成10年度において、北京師範大学,上海復旦大学、上海社会科学院などの中国側研究機関の学者と交流を深め、来年度に完成する最終研究成果をまとめる上のヒントを得ることが出来た。また、数多くの学会に参加し、日本側の学者との意見交換も行った。ー一月の史学会大会において、研究発表を行うとともに、関連の論文を二本完成し、研究雑誌に発表した。 完成した論文において、特に「漢奸」と呼ばれた中国人の「日本通」を取り上げた。取り上げた人物は必ずしも外交官ではなかったが、中国の対日外交に多大な影響を与えた人々であった。近代において、とりわけ、昭和戦前期において、「日本通」や「親日派」は何を意味するものだろうか。現在の日中関係にも陰を落としているこの問題から突破口を発見し、近代の日中関係を新たに整理していく作業の第一歩を踏み出したといえよう。 来年度の研究期間中において、今年度の研究を踏まえて、「中国通」と「日本通」外交官をキーワードに、総合的な研究成果を完成していく予定である。
|